製造物責任(PL)とアメリカの現状
2003年は、私にとって特別な年となりました。なんといっても社会人になって初めての海外! ・・年中無休のわが社に、海外旅行と言う文字は無いのです。しかも6カ国! ・・台湾、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、アメリカ。しかも 講師! ・・クライアント様、本当にありがとうございました。
国内では、全国各地で毎年10回以上の講演を行っていますが、海外での講演は各国の法制度や地域事情など逆にこちらが勉強させていただいている感じでとても申し訳なく思っています。特にアメリカはPL先進国と言われるだけあって、企業の賠償と言う点でさすがの私もひたすら驚き、得心したことが多くありました。
お返しとしてと言ってはおかしいですが、感謝の気持ちを込めて私が勉強させてもらった事をご報告したいと思います。一緒に講演していただいた、John Puttock弁護士(LA)C.Bradford Marsh弁護士(Atlanta)、アメリカでのPL事情を詳しく教えてくださったTMS社の富永さんに心からお礼を申し上げます。
PLとは?
Product Liability(プロダクト ライアビリティ)の略です。日本語で言うと製造物責任。製品に欠陥があり、それが原因で消費者や第三者にケガをさせたり、その所有物に被害を与えた場合、製造者や輸入業者などは、その被害を弁償しなければならないという考え方です。
たとえば、テレビが発火して家が燃えたとか、薬で重い副作用が生じたとか、自動車のブレーキに欠陥があり事故になったなどがPL事故にあたります。食中毒もやはりPL事故の代表的な例です。よく言われるPL法は、いわゆる「消費者保護」を目的とした法律だとお考え頂くとわかりやすいと思います。
アメリカのPL事情
びっくり!賠償金5,600億円!? GM(ゼネレルモータス)社がシボレーと言う車の衝突火災事件で訴えられ、1999年にその評決が下りました。5600億円(49億ドル)がGMに課せられた評決金額です。資料を見るとそのほかにもヘリコプターが墜落し死亡した事件で400億円(3.5億ドル)、やせ薬の副作用で4,300億円(37.5億ドル)の和解なんていう信じられない金額が並んでいます。日本企業もPL評決で100億円(9000万ドル)という例もありました。
訴える側の理由も、われわれ日本人には理解しがたいものも多いですね。タバコによる肺がんで死亡したとしてタバコメーカーを訴え97億円の評決が下ったとか、最近ではマクドナルドで肥満になったとして集団訴訟となったようです。(さすがに敗訴したようですが)
マクドナルドでは、ドライブスルーで買ったコーヒーを79歳のおばあさんが膝の上にこぼして火傷したという事件がありました。コーヒーの温度が熱すぎるというのが訴訟の理由だったようですがこれは、286万ドル(約3億2000万円)を支払えと言う評決が下りました。
おばあさんが猫を乾かすために電子レンジに入れて暖めたところ、猫が爆死して、「説明書には『猫を乾かしてはならない』とは書いてなかった」といって訴訟を起こして、勝訴したというお話がありますが、これは伝説で実際にあった話ではないようです。しかし本当に存在する商品の警告表示で
「身に着けたままの衣料にあてないでください」 ・・・ アイロン
「飛行には使えません」 ・・・ マント
なんていうものもありますし、ベビーカーの警告表示に「赤ちゃんを乗せたまま折り畳まないでください」というのもあるようですから、現実とかけ離れているとはいえないかもしれません。
次号でどうしてこんな事になっているのか?日本との違いは何かについて書かせていただきたいと思います。